〔 おもとの丘奮闘記 2023-⑥ 〕
かぼすの花が見えるようになりました
4月の後半に入り、かぼすの花が確認できるようになりました。現在は蕾の状態で、5月の中旬ごろ開花すると思
われます。
表題には矛盾することを書いています。花が着いたらいけないは、育成中の幼木の話。花が着かなきゃ困るのは結
果樹(けっかじゅ)のことで、かぼすの売り上げが増えず農場の大問題になります。
( かぼすの蕾 )
植えてから3年間は実を成らせない(幼木期)
「おもとの丘」では、苗を植えてから3年間は実を成らせず、ひたすら樹を大きくする栽培管理をしています。 篤
農家では、「うちは2年育成、3年目から成らせる」という人もおられますが、これは熟畑(じゅくばた:長く作
物を栽培して土が出来上がっている畑)でのことだと思います。うちの畑は造成地なので3年間はかかります。
(幼木期はすくすく伸びて花を着けないのが理想)
果樹類では、樹体が成長することを「栄養生長(えいようせいちょう)」と言い、また、花を着け、実を着ける
ことを「生殖生長(せいしょくせいちょう)」と呼びます。
植物は、樹が大きくなるとたくさんの果実が成り子孫繁栄につながりますので、初期のころはひたすら樹を大き
くしようとします。(栄養生長)
ある程度樹が大きくなると、特に枝の先端部分で花を着けるようになります。(生殖生長)
樹が順調に大きくなってから花が着くようになることが望ましいのですが、いろいろな原因で苗の成長が悪く、
いじけてしまうと、栄養生長をあきらめ花を着けることがあります。
摘蕾(てきらい)をしています
苗の時期に花が着いてしまったものは、そのまま置いておくと苗が成長しなくなるので、花を摘み取ります。これ
を「摘蕾(てきらい)」と言います。その後、花の時期に摘むことを「摘花(てっか)」、果実になってから摘む
ことを「摘果(てっか)」と呼んでいます。いずれも幼木にとっては必須の作業です。
(摘蕾作業)
手で摘み取ります。小さい蕾もあり
結構神経を使う作業です。
(花の着いた弱い枝)
弱弱しい枝には花が着きやすい。
(強い枝の先端)
栄養生長が盛んな強い立枝には花は着かない。
(見逃して大きくなったかぼす)
幼木に着いた花を、何回か見回りして落とした
はずなのに、こんなに大きくなって残っていま
した。
この果実がなければ、苗がもう少し大きく
なっていたのに・・・。
結果樹(4年目以降)は、たくさん花が着いてほしい
さて、一方結果樹(けっかじゅ)の園地では、たくさん花が咲いてたくさんかぼすを収穫して、農場の売り上げを
増やさなければなりません。
ところが、かぼすの樹は生き物ですから、工業製品のようにきちんと計画的に生産できないことがあるのです。
もともとかぼすは、花着きが気まぐれだと言われています。(2022年5月11ブログ「カボスの花は気まぐれ」参照)
しかし、同じ柑橘類でも、逆に花が着きすぎて樹勢が落ちないようにするのが大変という種類もあります。
たくさんかぼすが成った年の次の年は少ない「隔年結果(かくねんけっか)」とか、台風や鹿に食べられて葉がな
くなったら花は着かないとか、窒素肥料が効きすぎて樹勢が強すぎても花は着きません。
これをうまくコントロールして毎年たくさん収穫することが、かぼす栽培者の腕、技術といえます。
(適度に花が着いた標準的な樹)
上の写真は現在のかぼすの状況です。まだ蕾なので花は目立ちませんが、樹全体にほぼ均等に花が着いています。
新芽も適度に発生してバランスの良い、そこそこ理想的な花の着き方です。
ところが、こんな樹ばかりならばいいのですが、中にはほとんど花が見えない樹もあり、個体差が大きい年になりそうです。
(花の全くない枝)
何らかの原因で旧葉がほとんど落ちた枝。
花より葉を優先して発生させるため、花は
着いていない。
(葉芽だけの枝)
今年は葉だけの枝。このまま伸びが止まり
光合成の同化養分が十分貯まると、来年こ
れに花が着く「結果母枝(けっかぼし)」
になる。
かぼすの花は、一気には咲きません。ある時樹を見て「今年は花は少ないなあ」と思っていても、その後、
「遅れ花(おくればな)」が咲いて、そこそこ収穫はあったなということもあります。現時点ではやや少な
めでバラツキはあるなあと思っていますが、今後の花着きをかたずを飲んで見守っています。
幼木で落とした花を、結果樹にもっていって付けられればと思うこともあります。
人も、あの人の顔とこの人の性格を足せば完璧なのになあと思うこともあります。
しかし、そんなことはできません。
かぼすも人も生き物ですから。
難しいですなあ。
( おもとの丘の長老 )
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