〔 おもとの丘奮闘記2023-⑦ 〕
昆虫マニア、蝶マニア
今回この原稿を書くにあたりちょっと調べようとして、アゲハ蝶をインターネットで検索してみました。まあ出る
わ出るわ、写真から解説文から飼育法まで、アゲハ蝶に関するありとあらゆることであふれていました。
世に昆虫マニア、蝶マニアの人が多いというのは知っておりましたが、改めてすごいなと思いました。純粋にアゲ
ハ蝶に興味や愛情を感じている人に、とやかく言うつもりはありません。
しかし、かぼす(柑橘)を「業」として栽培している農場にとって、アゲハ蝶は害虫です。
( アゲハ蝶 成虫 )
ナミアゲハ
(幼虫は柑橘類の葉を食べて成長します)
(※この写真のみネットからお借りしました。)
幼虫が悪さをします
アゲハ蝶の成虫は蜜を吸うだけなので問題ないのですが、幼虫が悪いことをするのです。
アゲハ蝶の仲間はかなり多くの種類があり、その種類ごとに幼虫が食べる植物が決まっています。柑橘類を食害す
るのはナミアゲハ(一般的なアゲハチョウ)で、我が農場が困っている種です。
( 食害中の若齢幼虫 )
旺盛な食欲で葉を食べます。
( 葉を全部食べられた枝 )
一枝に2匹もいて、葉が食べつくされた枝。
特に樹を大きくしたい幼木期に葉を全部食べられ
ると、この枝は使い物になりません。
(老齢幼虫)
年に何回も発生する
アゲハ蝶は、卵→幼虫(1齢~5齢)→蛹(さなぎ)→成虫が1サイクルで、40~50日で一回りし、このサイ
クルを年3~4回繰り返すと言われています。一度退治したぐらいでは防除は完了ではなく、何回も殺虫剤をかけ
ることが必要になります。
( アゲハ蝶の卵 )
うちの農場で4月の13日に初めて確認しました。
孵化した幼虫が食べられるように、柔らかい新芽に
しか卵は産みません。(古い葉は硬い)
4~5日で孵化。
( 若齢幼虫 )
1~2齢くらいの幼虫。小さいながら黒いので見つ
けやすい。
鳥などに狙われやすいのではないかと思っていた
ら、これは、鳥のフンに擬態しているらしい。
(白い筋も入って芸が細かい)
( 老齢幼虫 )
蛹になる直前の幼虫。4~5㎝の大きさになり、食
欲も旺盛であっという間に一枝を坊主にします。
おでこに目のようなものが見えるのは、天敵を欺く
ニセの目。一説によると、緑の蛇を真似しているの
では?とのこと。
( 葉の色に酷似 )
老齢幼虫の色は葉の色によく似ていて、パッと見た
だけでは見逃すことがあります。
・枝が丸坊主になっている
・黒い虫くそがある
・プ~ンと臭いにおいがする
などで発見できます。
エカキムシの防除で退治できます
柑橘類の幼木の最凶害虫は「エカキムシ(ミカンハモグリガの幼虫)」で、殺虫剤をかなりの回数散布しますが、
アゲハ蝶の幼虫もこのエカキムシの薬剤で同時に防除できます。
しかし、この防除も雑にやると薬剤のかけ漏れがあって、巨大なアゲハの幼虫が生き残って枝を丸坊主にしている
ことがあります。防除は丁寧にやらないといけませんな。
安心してください
かなりの回数殺虫剤をかけると書きましたが、これは、まだ実を成らせない「幼木」のみに限る使用法で、農薬
取締法でも認められています。うちでは、植えてから3年間を幼木期として管理しています。
一方、実を成らせる「結果樹」では、樹もだいぶ大きくなって、少しくらいアゲハの幼虫に食べられても影響は
少なく、また、幼木期のような殺虫剤のかけ方は認められていないので、「おもとの丘」では、生育期全般を通
じて殺虫剤を極力使用しないようにしています。
いくら柑橘類の葉しか食べられないといっても、人の植えたかぼす園に無断で侵入し、
かってにむしゃむしゃ葉を食べたらいかんでしょうが。
成仏しなさい。 合掌。
( おもとの丘の長老 )
※次回は、連休中のため1回休みます。
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