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かぼすは収穫後も生きています


( おもとの丘奮闘記2024-⑤ )



季節は10月下旬となり、みずみずしい緑色だったかぼすも、徐々に緑色が薄くなり黄緑色になりつつあります。

「おもとの丘」では、緑かぼすを中心にしながら、黄色の完熟かぼすも販売しています。


完熟かぼすには、まろやかな酸味と果汁たっぷりなのは鍋のポン酢にぴったりとファンがおられます。しかし、

やはり注文が多いのは緑色のかぼすで、かぼすは緑のイメージということと、鮮烈なかぼす特有の香りは緑色の

未熟な果皮に多く含まれるということが要因だろうと思われます。


「おもとの丘」では、基本的に自然の状態のかぼすを出荷するという路線でやってきましたが、一部貯蔵をする

ことで、緑かぼすの出荷期間の延長と完熟かぼすへのスムーズな移行ができるようにしたいと、現在試験中です。




収穫前のかぼすは、光合成も呼吸もしています


 樹になっている時のかぼすは、葉や果実の緑色の部分で光合成をしています。  

    光合成・・・水+二酸化炭素 ( 日光 ) → 炭水化物+酸素+水


と同時に呼吸もしています。

    呼 吸・・・炭水化物+酸素+水  →  二酸化炭素+水+エネルギー


日中の太陽光が当たっている時は 「呼吸」より「光合成」の方が盛んなので、表面上は光合成のみ行なっている

ように見えます。太陽光のない夜間は、呼吸だけになります。





収穫後もかぼすの果実は生きて、呼吸しています


 ( 収穫果 )  10月23日現在・・・果皮の緑色がやや薄くなってきた。まだ生きている。





収穫後、そのまま放置するとどうなるか


 かぼすを収穫すると、光合成はほとんど行われず呼吸のみになります。

 呼吸をずっと続けているとどうなるか

    

     水分の蒸発  →  果実がしぼむ、果汁が少なくなる 

     エチレンガスの発生 →  果皮が黄色くなる        

               




( 放置したかぼす )


 皮は萎びる、色は黄色くなる、ヘタは枯れる。


   ※商品価値はない。













( 樹上完熟かぼす )


 樹の上で完熟させたかぼす。果汁たっぷり、

 まろやかな酸味。鍋のポン酢に最適。



   ※完熟かぼすで販売。








かぼす貯蔵の原理


 かぼすの外観、品質を維持して貯蔵するためには、劣化する要因を取り除くことです。


    〇呼吸の抑制・・・呼吸により水分が蒸散、養分(炭水化物)の消費

            (ガス組成の変更、温度の低下、高湿度維持)  

 

    〇エチレンガスの除去・・・老化ホルモンであるエチレンを取り除く

            (エチレン吸着剤や空調装置で除去)

  

  生理的な活性を下げること    

   「低酸素・高二酸化炭素、低温、高湿度、エチレン除去」      

     の状態が望ましい。





貯蔵実験の実際

 実は、かぼすの貯蔵の研究は以前から県の試験場で行なわれており、貯蔵のノウハウは確立されています。

 篤農家が栽培したかぼすを、専用の貯蔵庫で厳密に管理すれば、9月に収穫したかぼすを2月頃まで貯蔵する

 ことが可能です。


 しかし「おもとの丘」では、まだ専用の貯蔵庫はありませんし、農場が広いので貯蔵に適するかぼすを丁寧に

 栽培することはできません。(貯蔵に適するかぼす:まんべんなく日光が当たり果皮が強いもの)


  よって、簡易貯蔵の試験を行なっています。 




〔 資 材 〕

  水分保持やガス組成のコントロールを行なうため、かぼすを入れておく袋資材を検討しています。




( Pプラス )


 青果物の保存を目的に開発された、特殊な

 ポリ袋。

 (目に見えないような微小な穴が開いている)


 吸湿紙とエチレン吸着剤を袋の上部に入れて

 いる。


 効果は高いが、2kg程度しか入らない。






( ポリのゴミ袋 )



 家庭用のゴミ袋で試験中。Pプラスより効果は

 落ちるが、7~8kg入れられる。










  ポリ袋は穴が開いている

   Pプラスもゴミ袋もポリエチレン製です。ポリは微小な穴が開いており、袋の内と外で一定のガス交換を

   行うことができます。ちなみにビニール袋はガスが通過せずに、かぼすが窒息してしまうので貯蔵用の袋

   としては不適格Dす。


   ポリ袋は、中のかぼすが窒息しない程度に、袋の中のガス組成を酸素減、二酸化炭素増の状態にします。

   よって、呼吸が抑えられ、かつ、水分の蒸発も防ぎます。



〔 エチレン除去 〕

  大規模な青果物の貯蔵庫では、オゾンを使ったエチレン除去装置を備えていますが、小規模な貯蔵庫の場合、

  多額の施設費をかけられないので、「エチレン吸着剤」という市販の資材を使っています。



〔 温 度 〕

  温度が低くなるほど生理的な活性が抑えられ、少し眠ったような状態になります。長期にかぼすを貯蔵する

  場合は、10~15℃の慣らし期間を経て最後は2~3°Cで数か月貯蔵します。


  しかし「おもとの丘」では、そこまで本格的な貯蔵を計画していないので、10~15℃でよいかなと考え

  ています。





今もお客様から、「11月の○○頃、緑色のかぼすはある?」とかいう問い合わせがあります。通常は、緑色の

かぼすは10月上旬まで。その後黄緑になり、11月中旬以降には完熟で黄色になります。

11月や12月の緑色のかぼすは貯蔵したものです。貯蔵するとコストがかかりますから、販売代金は高くなり

ます。

「おもとの丘」では、来年から緑色のかぼすの出荷期間をちょっとだけ伸ばして、ちょっとだけ単価を上げて、

皆さんが買えるようにしたいと考えています。




         今回もいささかマニアックな内容になってしまいました。読みにくかったかと思いますが、

         最後まで読んでいただきましてありがとうございます。


         さて、前回書いた通り、今年は裏年で全県的に生産量は少なくなっています。来年は、今年

         の反動で、全県的に生産量は大幅に増加する見込みです。

         青果物の宿命で、量が多いと販売単価は下がります。それを避けるために、露地かぼす出荷

         のピークの山を後ろに伸ばして、農場の売り上げを落とさないようにしたいものです。

         皆さん、来年は「おもとの丘」のかぼすをバンバン買ってください。


                                    ( おもとの丘の長老 )


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